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2007年3月15日 (木)

『横浜木材史』

Photo_106  『横浜木材史』(師田滝三著 昭和33年7月 横浜木材業協同組合出版)は、江戸時代に深川の木場を拠点として確立していた木材業が、明治以降横浜にも発展していく様子が書かれている。木材業を通して横浜の近代商工史を知ることが出来る、大変勉強になる本だ。特に関東大震災後の輸入木材の増加に対応して計画された「横浜市営貯木場」の設置の経緯は、一読の価値がある。
 市営貯木場は、その設置場所を東京に近い鶴見沖とするか、横浜木材界の有力者が押す新山下町とするかで意見が分かれてしまった。昭和3年、東京外国木材協会が大反対していた新山下町にて承認されると、東京側は外材の輸入を「東京直航」とする決議を出した。「横浜港を使用しない」という決議に非常な衝撃と恐慌をきたした横浜側は、貯木場の経営権の7割を東京側に譲渡する旨の提案を出す。この提案でどうにか東京側との調整がつき東京直航は回避されるが、その際東京外国木材協会の幹事会が出した声明書が面白い。 
  
 「そもそも東京直航論と横浜提携論とは表面上大なる径庭あるが如きも、その根本目的は何等異る処なく、ただこれに到達する経路に相違あるにすぎず。・・・例えば足強き者は険路を直進して早く目的地に達せんとすれども、足弱き者は一見多少は遅く思わるるも平坦なる道を選び完全なる行程を希望すると同様なるべし。・・・共存共栄の精神により横浜側と強調し、直航に近き効果を収めて完全なる経路を採るは、至当の処置なるもの事を確信するものなり・・・」

 こうして様々な利害や対立を乗り越え、どうにか貯木場が本格的に運用開始された昭和10年には、すでに震災による特需が終わり、日本国内への米材の輸入は激減の一途をたどってしまっていた。

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コメント

木材にこんな歴史があったなんて知らなかった!今回もお勉強になりました。

投稿: tune | 2007年3月18日 (日) 10時11分

 私も勉強になりました・・・。
こうやって自分の住んできた町の歴史を知ると
その町がますます好きになりそう・・・。
 し、しかし、文章が難しい・・・。
やっぱ、Aちゃん、頭いいんだなあ・・・。
普段はあんなに気軽に気さくにお話していただいてたのに
こういった文章を拝見すると、いやはや、恥ずかしい・・・!!

投稿: ちゃり | 2007年3月21日 (水) 15時38分

>tuneさん 
ありがとうございます。私も木材の歴史については全く知りませんでした。前々回の「豊橋」の発見から鶴見木材会社池が存在していたことを古地図で突き止め、調べていくうちにこの本と出会いました。専門書ですが読みやすい本です。

>ちゃりさん
身内からも「文章が分かりにくい」との指摘があり、少し改変しました。余計に分かりにくくなってしまったらゴメンナサイ。普段の姿は仮の姿です。(ウソ)

投稿: tsurucoco | 2007年3月21日 (水) 21時56分

横浜の材木の歴史を書こうと思っていて検索した所、このページにたどり着きました。この本、私も読みました。良い本ですよね。

投稿: 川島純子 | 2011年1月22日 (土) 11時17分

コメントありがとうございます。
この本は木材の歴史を通して日本の産業や政治の
一端を垣間見られるような面白さがありますね。
木材の歴史を調べているうちに、「回漕業」にも興味が
出てきました。時間がなくなかなか調べきれないのが
残念ですが・・・。

投稿: tsurucoco | 2011年1月22日 (土) 23時23分

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